<21卒、22卒 向け>
そろそろ公務員試験の第1次試験が始まる頃であり、併願の可能性のある国立大学法人採用試験も始まっていきます。今回は”とある”国立大学に焦点を当てて、事務職員の働き方や業務評価方法、福利厚生やキャリアの考え方について「正直ベース(採用パンフレットには書かれない内容)で」まとめます。参考にしていただき、今後の志望の目安にしていただければ幸いです。
”とある”国立大学の概要
まず、今回モデルとする国立大学の概要をご説明します。
学生数:学部生約7,300人、大学院生約2,300人
学部(大学院)数:5学部(文系3、理系1、文理系1)
5研究科(文系2、理系2、文理系1)
教員数:約560人
事務職員・技術職員数:約300人
文理それぞれ学部・大学院がある総合大学。国立大学の中では中堅規模。入学難易度は割と高く、所謂「上位校」と呼ばれる大学。
働き方について
職務内容は?
国立大学の事務職員としては主に下記の仕事内容となります。主に学生支援系、研究支援系、国際交流系、総務・人事・労務系、財務系、広報・社会連携、図書館、医学部がある大学は病院事務、等々。それぞれの役割は国立大学法人等職員採用試験のサイトに掲載されているので、そちらを参照いただき、こちらでは裏話などを・・・。
職員の配置
国立大学それぞれ、規模に応じて職員の配置状況に差があります。特に旧帝大のような大きな大学と単科の大学では雲泥の差です。上記の”とある国立大学”の規模だと、事務局(ヘッドクォーター)に所属する職員と学部の事務部に所属する職員とに分かれます。それぞれが職員定数を持っていますが、ギリギリの人数で運営してますので、定員削減がある場合は、やりくりが大変厳しくなっているのが現状です。
職務の大変さ
どの系に所属しても、仕事は忙しいです。
国立大学が法人化されてから、新しい仕事がかなり増えました。大学経営としては本当は必要だったのに、法人化前には見えていなかっただけで、健全になっただけとも言えます。また、文科省の政策(中央教育審議会の答申)に沿った大学運営が必要で、文科省と手を切れませんから本当の意味での自由な発想の大学経営は出来ませんが、文科省の政策の中でいかに自大学らしい取組を行っていくことが必要か?を考えながら運営していく必要はあります。ですから現在の国立大学職員の中に「前例踏襲で良いのだ」という意識はほとんど残っておらず、毎年チャレンジしていく働き方の意識になっているのは評価できると思います。
職員間の上下関係、同僚との関係は?
職場は割とアットホームな雰囲気がありますが、悪く言ってしまえば”ムラ社会”的な雰囲気があります。その雰囲気が好きな人は居心地が良いでしょうが、嫌いな人は居心地悪いと思います。
上下関係、同僚との関係はこのムラ社会的感覚が強い人同士だと割と緩めでウォームな感じがありますが、感覚が無い人同士だと上下関係はしっかりあって(パワハラ系ではない)ドライな感じがあります、同僚との関係もこの場合はドライになります。
ちなみに、事務組織のトップである事務局長や一部の部長は、文部科学省の人事で就くポストであり、自大学で採用された人は就けないポストがあります。割と大学の事務組織でもトップのポストなので、文部科学省の人事で異動してくる人がとんでもない人である場合、その部署は数年地獄を見ることになります。逆に素晴らしい人が異動してきた場合は、事務組織の活性化に繋がっていくことになりますね。
教員との関係は?
教員との接点は、学部事務職員なら毎日のようにあります。また事務局(ヘッドクォーター)の職員であっても、学内会議メンバーの教員との接点があり、教員無しに進めていける事業はほとんどありません。
では、教員から見た「事務職員」はどんな感じか?これは2つに分かれます。
「あくまで事務職員は教員の補助であって、教員の言うことを忠実にこなしていけば良いのだ」とする教員。
「大学を運営していく上では、事務職員ならではの見識も必要だから、一緒に創り上げていきましょう」とする教員。
上記の、とある国立大学では、学部によってその差が色濃く出たりしていましたが(法律系の先生だと弁も立つので結構面倒くさい・・・笑)、教員の世代も変化していますので、今後は協働して力を発揮しないといけない、と考える教員が増えていくでしょう。
勤務時間は?
勤務時間は、上記のとある大学の場合、8:30~17:15で、その後が残業となります。残業時間は部署によって差があり、多いところは36協定(調べてみてね)以上の残業時間が常態化していることもあります。ノー残業デーも決めていますが、効果があるかは微妙です。
残業代ですが、法人化以前は、毎月の残業時間数が予算により決められていて、たとえ大幅に超過していてもその分は支払われないという”ブラック”な状態だったのですが、今は大学も労基署の調査が入って指摘されるケースが増えたため、しっかり退勤時間を毎日書かせ、その時間数分の残業代を支払う、という形になりました。
ジョブローテーションは?
法人化前のような3年以内でジョブローテーション、という方針は変わっていませんが、場合によって3年以上同一部署で働く職員も出てきています。特に法人化前には無かった仕事を行う部署にその傾向があります。私としては、ジョブローテーションの弾力化こそ今後の国立大学には必要と思います。「学内公募制度」や「FA制度」も立ち上がってくれれば、良いと思うのですが、実現する可能性は低そうです。
ちなみにですが、国立大学において昇進が早い部署は、財務系の部署です。やはり予算を採ってくる部署は偉い!という風潮は法人化前と同様にあり、他の系の部署で同等のキャリアを持つ職員よりは明らかに早く昇進していきます。ここに職員間の見えない不満が漂っていると私は思っていますが、改善されることはないでしょう。
異動希望はどうするの?
異動の希望を年度初め(5月)に行うのですが、『希望調書』という紙1枚を提出するだけです。異動の希望を書く場所も数行与えられるだけで、あまり具体的なことまで書く余裕はありません。また、基本的にはこの紙1枚を提出するだけで終わるので、異動希望に関して上司との面談はありません。私の記憶では希望調書の希望が叶ったケースはほとんどありません。
勤務評価や職務の相談について
勤務評価の方法
所属する部署の上司から部下への勤務評価があります。年度当初に1年間の業務目標を立てて、上司との面談で決定するのですが、業務目標は近年定性的なことだけでなく、定量的な目標も入れる必要が出てきました。もちろん数字ノルマまではいきませんが、業務目標を立てるところから厳しくなってきています。
そして年度末近くに上司との面談で当初に立てた業務目標の達成度を自己評価し上司との面談にて報告、上司が評価を下します。ただ、正直なところ元公務員である国立大学職員は、こういった勤務評価に慣れていない部分があり、上司によって評価するレベルの差があるように感じます。
職務相談、キャリアの相談
上記のとおり、年2回の上司との面談の場で、職務に関する相談は可能ですが、今後の自分のキャリア(例えばこの先、どんなスキルを付ける必要があるか、どんな仕事をしていけばこの部署に配属する可能性が出てくるか?)や異動の相談については、あまり話す余地も時間も無く、本当に相談したい場合は個別に上司との面会の時間を作らないといけない、という状況でした。
福利厚生、キャリア、メンタルヘルスについて
給与について
給与については、新卒採用後数年は民間企業に勤めた友人とは差が生まれるでしょう。30歳を超えた頃から少しずつ追いついていくと思いますが、大手企業に勤める友人とはかなり差を付けられていると思います。結婚して家庭を持つのであれば、計画的な貯蓄が有効だと思います。
休暇取得について
休暇制度は各機関の規定を見ていただくとして、休暇の取得しやすさについてですが、これはすみません、部署によるのと、時期によります。繁忙期の休暇取得は結構勇気が要りますし、休暇中に自分の仕事が消化されることはないので、休暇明けが大変ってこともありますね。反対に閑散期は休暇取得しやすいです。これは民間企業も同じだと思います。
研修制度について
基本的には、役職に応じた研修(課長研修や係長研修等)と、業務に応じた研修(人事研修、会計研修等)があります。その他最近では大学も国際化が叫ばれているところなので語学研修に力を入れる大学も増えています。また、法人化後に専門的な業務が増えているため、専門業務を補うための研修が受けられるようになってきました。
福利厚生施設について
学外の施設としては、国家公務員共済組合連合の宿泊・保養施設を割安で利用できます。まあ安いのでちょっと施設が古くても我慢って感じですかね。学内の施設の充実度については、大学によりけりが現状です。
キャリアの考え方、メンタルヘルスへの意識について
意外と見落としがちですが、大事なのがキャリアの考え方とメンタルヘルスへの意識についてです。キャリアの考え方は上記の研修に通じるものがありますが、徐々に個々の職員がどうすれば業務スキルUPできるか?を検討する土壌は生まれてきました。ただ、昇進まで含めたキャリアUPの道は?についての具体策はまだ大学として考えておらず、これは要改善なことと思います。現状では、昇進する職員と昇進できない職員の差は何なのか?根拠が不透明であることは否めません。これは事務組織運営上マイナス点であると私は考えています。
また、メンタルヘルス対策もかなり遅れています。特に管理職にその知識がほとんどありませんので、相談もできない上司がたくさんいます。また職員全体にセルフケアの知識が無いので、割とメンタルを壊して休職する職員も多いです。
もちろん、毎年のストレスチェックは行っていますが、職員全体が「こんなチェックやったって何も変わらない」という認識でチェックを受けてますし、大学に所属する産業医は学生担当も兼任しているので、職員のために活躍しているとは言えないのが現状です。
以上、国立大学が持つ様々な「顔」について紹介してきました。表には出てこない裏の顔をぜひ知ってもらって、それでも国立大学に就職したい!と考える人は、どうか頑張って欲しいと思います。
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