<21卒 および22卒 向け>
先日、今年の10月1日付け、大卒学生の就職内定率が文部科学省から発表になりました。学生の皆さんも、関係者の皆さんも、内定率の下げ幅がリーマンショック以来ということで、ショックを受けられた方も多いかと思います。
私は、実はそれほどショックではなく、「各企業もよく持ちこたえて新卒採用を行っているな」というのが感想です。では、この10月1日付け内定率について、リーマンショック以降の流れも見ながらもう一度考えていきましょう。
文部科学省発表の内定率、就職率とは?
この文部科学省(厚生労働省)の大卒者就職内定調査および就職状況調査は、あらかじめ文部科学省・厚生労働省において抽出された大学(全国から抽出)に調査が依頼され、依頼を受けた大学は「所定の調査対象学生を抽出した後、電話・面接等により、性別、就職希望の有無、内定状況等につき調査を実施」という調査です。
なので、全国すべての大学の調査結果ではありませんし、調査対象大学においても当該学年すべての学生に対する調査結果ではありません。私も以前、文部科学省へ出向していた同僚に調査依頼大学の一覧を見せて貰いましたが、各地域において名前のある大学、それも文理それぞれの学部がある総合大学が主な依頼先となっているので、率は割と高めに出るように思っています。
上記のとおり、すべての大学に当て嵌まる調査結果にはなりませんが、卒業年次ごとにデータを比較していくことで、就活の傾向が分かるので、私はこの文科省の調査結果を注視しています。
それでは内定率および就職率を見ていきましょう。
(2018卒~2021卒の内定率および就職率)
相変わらず、見にくい表でスミマセン(^^ゞ
この表は2018卒から2021卒を対象に、それぞれ一番左のグラフの塊から10/1, 12,1, 2/1,の内定率を、一番右のグラフの塊が卒業時の就職率を表しています。黄色丸印で囲った赤色の棒グラフが2021卒で、10/1の内定率は69.8%でした。
確かに前年(2020卒 76.8%)から7ポイントの落ち込みですから「やはりコロナの影響で2021卒は厳しい」とも言えます。ただ、過去3年間(2018卒~2020卒)を見ますと10/1の内定率が軒並み75%を超えています。
最近の就活は”売り手市場”とも言われてたくらい企業の採用意欲も高かったので、10/1までに内定を得た学生の割合が高かったと考えています。その結果「過去3年の10/1内定率が高かったから、落ち込みが大きく見えている」ということも言えるかと思います。
では、何かと比較されるリーマンショック時の状況は?
(2008卒~2013卒の内定率および就職率)
リーマンショックが発生したのは2008年秋。その影響が出たのは2009卒ではなく2010卒、黄色丸印で囲った赤色のグラフになります。10/1の内定率は62.5%。2021卒よりも低い数値です。
ただ、その後の12/1, 2/1の内定率を見ると、それぞれ73.1%,80.0%と上がり、卒業時は97.3%まで回復しています。
ちなみに平成22年版の『労働経済の分析』を見ますと、
「リーマンショック前の2007年秋に景気後退過程に入り、その後、世界的な景気後退の影響を受けて、2008年末以降、雇用情勢は急速に悪化。特に、若年層においては、完全失業率が他の年齢層に比べ大きく上昇。2009年後半からは雇用情勢も改善しつつあるが、求職活動をあきらめ非労働力化する動きもみられている。こうした厳しい雇用情勢の影響は新規学卒者の就職状況にもあらわれている。」という論調です。
所謂「就職氷河期」の始まりだったのですね。
そして、注目したいのが表中、青色丸印で囲った黄色の棒グラフの2011卒の10/1内定率です。57.6%と、リーマンショックの影響をもろに受けたとされる2010卒よりも低い内定率になっているのです。
東日本大震災が起きたのは2011年3月。2011卒の10.1内定率が出るのは2010年で、東日本大震災が起きる前です。少しずつ有効求人倍率も上昇しており、10/1の内定率も2010卒よりも改善していいはずなのに、異様に低い結果になっていますね。
この頃は、リーマンショックの大打撃から復活しきれていない頃で、円高、株安が続き、企業の採用も苦しかったのだと思います。それでも2011卒は、12/1で68.8%、2/1で77.4%の内定率。卒業時就職率も97.6%と回復しています。
結局、2010卒も2011卒も10/1内定率では、低い数値に落ち込みつつも、卒業時の就職率ではそこそこ回復していますね。ただし納得して入社していけていたのか?は不明です。
2014卒~2017卒はどうだったか?
リーマンショック、東日本大震災から少しずつ復興し、徐々に景気も戻ってきた頃。学生の内定率、就職率についても徐々に改善しています。ただし、この頃は別の要因により、内定率、就職率に影響を及ぼしていました。
・平成25(2013)年3月卒から就活スケジュール変更
それまでの「大学3年10月 企業の広報活動解禁 大学4年4月 選考活動解禁」から
「大学3年12月 広報解禁 大学4年4月 選考活動解禁」へ変更
・平成28(2016)年3月卒から就活スケジュール変更
「大学3年3月(4年に上がる直前) 広報解禁 大学4年8月 選考解禁」へ変更
・平成29(2017)年3月卒から就活スケジュール変更
現行の「大学3年3月 広報解禁 大学4年6月 選考解禁」へ変更
この時期は、度々就活のスケジュール変更がありました。
一連のスケジュール変更で影響を最も受けたのは2016卒でしょう。さすがに大学4年の8月に選考解禁は無理がありましたし「本当にこの時期から選考始めるの?」と、企業の動きが読めず、スケジュールに不信感が芽生えたのもこの頃でした。
こういった就活スケジュールの変更による内定率、就職率への影響も今後あり得ますので、臨機応変に対応していく必要があります。
2021卒および2022卒に言えること
では最後に、今就活中の2021卒と来年に本番を迎える2022卒がどうなるか?を見ていきます。
2021卒はまだまだ大丈夫
上記、表のとおり、景気の落ち込みと同時に起きたリーマンショックの影響を受けた2010卒も最終的な就職率では90%台後半の数字が出ています。
昨日、経済産業省も「地域の魅力ある新卒採用継続企業503社」を発表し、以前の2度目の就職氷河期となるのを何とか阻止しようとしています。
ですので、業界や企業の選択肢を狭めたりしなければ、チャンスはまだまだあると思っています。諦めて就職留年なんて勿体ないと思いますよ。今後12/1, 2/1の内定率を注視していく必要はありますが、12/1の内定率が80%台に乗れば、卒業時の就職率も90%台に入ると考えています。
2022卒は「粘り強く」が必要
日本の景気は、今年の4月~6月期を底に、少しずつ上昇しています(もちろん大打撃を受けている業界も多いのですが)。ただ、昨年の勢いに戻るまでは数年の時間が掛かるでしょう。
上記の表のとおりリーマンショックの影響をもろに受けたであろう2010卒よりも2011卒のほうが10/1内定率が低かったことを考えると、こういった経済や社会の変動期があると1年では収束しないということが言えると考えます。
もし来年コロナワクチンが世に出回り「withコロナ」が実現できたとしても、2022卒の就活も何らかの影響が出るはずです。
そんな中2022卒に意識してほしいのが、来年の10/1までに内定先を決められなくても、諦めずに粘り強く企業を探し、選考を受けていくことです。来年10/1までに内定先を決められない学生が多く出てくるかもしれません。ただし諦めずに粘り強く就活を続けていくことで、納得した内定を得られることに繋がります。
粘り強く続けるには、企業の「持ち駒」を出来るだけ多く持っておくことです。
選択肢を多く持っておけば、軒並み企業からの「お祈り」が来ても、そこで急遽の企業探しをせずに、すぐ次に動くことができます。それには今のうちから企業を広く見ていくこと、社会の動向を見ていくことを忘れないでください。社会の動向は日々のニュース、新聞で知ることができます。
弊ブログでも、ワールドビジネスサテライト(WBS)で報道された企業の情報をまとめて週3回UPしています。その情報を出発点としても構いませんので、そこからご自身でしっかり考察し、企業研究に繋げるようにしていけば、より良い就活ができると思いますよ。
ということで、10/1の内定率および2021卒、2022卒へのアドバイスは以上です。また12/1の内定率が出ましたら、ブログで取り上げたいと思います。
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